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順天堂大学体操競技部×TENTIAL【前編】 順天堂大学体操競技部がコンディショニング改革で掴んだインカレアベック優勝

順天堂大学体操競技部×TENTIAL【前編】
順天堂大学体操競技部がコンディショニング改革で掴んだインカレアベック優勝

──差が生まれるのは、「体操場」の中だけではない

2026年5月末に開催された、東日本学生体操競技選手権大会(東日本インカレ)。順天堂大学体操競技部は男子団体で2年連続14度目の優勝を果たし、女子団体も悲願の初優勝を達成。同部史上初となる、男女アベック優勝を成し遂げました。

 

オリンピックのメダリストを数多く輩出した名門校は、いまも進化を続けています。その歩みに、TENTIALは2024年9月から伴走してきました。「BAKUNE」のリカバリーウェア、夏用掛け布団、リカバリーサンダルなどの製品提供に加え、睡眠や栄養のセミナー、血液検査や食事記録に基づく個別フィードバックまでを含めた、包括的なコンディショニングサポートです。


この取り組みは、なぜ始まったのか。現場では何が起きているのか。男女の監督と主将、TENTIALの担当者それぞれに話を聞きました。前編では、取り組みが始まった経緯と名門が抱えていた意外な課題、それに対する順天堂大学体操競技部×TENTIALの取り組みの全体像について紐解いていきます。

後回しにされてきた体操界のコンディショニング

 

体操競技は「練習量」と「感覚の研ぎ澄まし」が何よりも重んじられてきた世界であり、技の難易度や完成度を極限まで高めるため、選手たちは日々、膨大な時間をトレーニングに費やします。 一方で、体操界全体を見渡すと、睡眠や食事といった「練習以外の時間(日常)」の管理は、長らく個人の感覚や自己責任に委ねられてきた側面が強くありました。いわば「体操場の中」での取り組みがすべてであり、チーム全体で科学的・体系的に日常のコンディショニングへ踏み込むアプローチは、これまでの体操界において極めて異例のチャレンジでした。 

オリンピックメダリストを多数輩出し、伝統と実績を誇る順天堂大学体操競技部も例外ではありません。「名門」と呼ばれるチームであっても、体操場の外の選手の日常までは手が届ききらない。そんな体操界の慣習を見直し、競技力の土台となる「日常」を整える挑戦が始まったのです。 

 

滑り止めを塗る体操選手

 

安定したパフォーマンスは「日々のコンディショニング」がつくる

 

「純粋なスポンサードというよりは、選手のコンディションを整える取り組みを一緒に模索していけないか。具体的には課題意識を持っていた『睡眠』を改善するようなことから何か始められないか、という議論が入口でした」

順天堂大学体操競技部の部長であり、女子監督を務める原田睦巳さんはTENTIALとの取り組みの背景をそのように振り返ります。

トップ選手を輩出し続ける環境と指導体制がある一方で、睡眠や食事といった競技力の土台には、まだ向上の余地がある──。そんな課題認識から議論が本格化し、2024年9月、コンディショニングサポート契約が結ばれました。

そもそも体操競技において、コンディショニングはどれほど重要なのか。現役時代、“美しい体操”で世界の頂点に立った男子監督・冨田洋之さんの答えは明快です。

インタビューを受ける原田睦巳監督

原田 睦巳/順天堂大学体操競技部 部長兼女子監督順天堂大学大学院コーチング科学領域 修了。同大学スポーツ健康科学部教授。2000年シドニーオリンピック競技大会で活躍後、指導者の道へ。セントラルスポーツ株式会社、スタンフォード大学体操競技部 アシスタントコーチを経て、現在は順天堂大学体操競技部部長兼女子監督を務める。指導者・研究者の両面から選手のパフォーマンス向上およびスポーツ医科学に基づいた育成を行う。

 

「大会本番で披露するのは、日頃の練習で何度もやってきた内容ばかりです。出来上がった技をより良くしていく上でも、重要なのはいかに練習を継続できるかということ。調子が良いときと悪いときで、技の変化をいかに少なくできるか。それが、力を出せる選手とそうでない選手の差になってきます。それは日頃のセルフマネジメントや日々のコンディション管理が直結する部分です」

もっとも、これまで数々の企業のサポートを受けてきた体操競技部においても、コンディションそのものに直接踏み込むサポートは初めてのこと。冨田監督は「新しい取り組みなので、こちらとしても楽しみでした」と当時の期待を語りますが、体操競技部にとっても、TENTIALにとっても、手探りの状態からのスタートでした。

当時2年生だった男子キャプテンの谷田雅治さんは、TENTIALは「そもそも未知の存在だった」といいます。距離が縮まったのは、セミナーを重ね「何でも気軽に相談してね」という声かけが日常になってからです。

今では選手それぞれが個別でTENTIALの社員に相談するような関係値となり、新入生は先輩からこの取り組みを聞いたうえで入学してくるため、最初の代のように構えることもありません。

 

インタビューを受ける谷田雅治選手

谷田 雅治/順天堂大学体操競技部 男子主将2005年福井県出身。順天堂大学スポーツ健康科学部。ジュニア時代から国内トップレベルで活躍し、高校3年時には、全国高校選抜大会で全国制覇、大学3年時には、全日本学生体操競技選手権大会で個人総合優勝の成績を収める。高度な技と安定した演技で高い実績を挙げる。順天堂大学体操競技部男子主将としてチームを牽引。

 

名門の課題は、意外にも「毎日の睡眠と食卓」にあった

取り組みが始まった当初、選手たちの実態は理想からかけ離れていました。最も顕著だったのが睡眠です。体操選手は日々の厳しいトレーニングで疲労を蓄積させる一方、その回復を支える眠りには無頓着になりがち。女子キャプテンの笠原有彩さんも、もともと睡眠の質に悩みを抱えていた一人でした。

 

夜中に目が覚めては、また眠る。それを繰り返しながらも、「そもそも睡眠について、深く考えることがなかった」といいます。

 

もっとも、眠りの価値を知らないわけではないのです。谷田さんは、自他ともに認める「ちゃんと寝れたら調子がいい人間」。気持ちよく起きられた日は、どれだけ練習がきつくても乗り切れる──。その感覚を、選手たちは体で知っています。ただ当時は、それを支える知識も、確かめる方法も持っていませんでした。


こうした環境をいかに変えていくか。冨田監督は、大学スポーツの構造的な難しさを指摘します。

 

「基本的に、体操場の中ではある程度目が行き届いています。でも、それ以外となるとなかなか目が届かない。プライベートの時間は、各個人の行動が100%になってしまうんです。だからこそ、知識を持った上で自らが最適な行動を選択できるかどうか、セルフマネジメントが非常に重要です」

 

実際、取り組みを始めるにあたって選手たちの話を聞いていくと、課題は睡眠に限らないことが分かってきました。体操は、自分の感覚を大切にする競技です。体重が軽いほど技のキレが良くなると感じ、食事を極端に控えてしまう。その結果として栄養バランスが偏り、疲労や怪我につながっていく──。

 

インタビューを受ける冨田洋之監督

冨田 洋之/順天堂大学体操競技部 男子監督順天堂大学大学院コーチング科学領域 修了。2004年アテネオリンピック団体金メダル・種目別平行棒銀メダル、2005年世界選手権個人総合優勝、2008年北京オリンピックでは、体操男子団体総合で銀メダルを獲得した。日本男子体操界を牽引。現役引退後は順天堂大学スポーツ健康科学部先任准教授、男子監督としてトップアスリートの育成と技術指導に取り組む。

 

そんな悪循環は、この競技では決して珍しくないといいます。順天堂大学の体操競技部でも、朝食を食べない選手が少なくなかったといいます。

 

実家を離れ、初めての一人暮らしで生活のすべてを自分で組み立てる大学生であれば、なおさらです。朝は時間がなくてバタバタ、昼はコンビニに行くのすら面倒。当時の自分について、笠原さんはこう振り返ります。

 

「1日1食だったり、ひどい時には『そういえば今日、食べてないじゃん』という日もありました」

 

インタビューを受ける笠原有彩選手

笠原 有彩/順天堂大学体操競技部 女子主将2004年愛知県出身。順天堂大学スポーツ健康科学部。美しく力強い演技を強みに、高校3年時は全日本選手権で優勝、大学4年時は東日本学生体操競技選手権大会にて、個人総合優勝の成績を収める。順天堂大学体操競技部女子主将を務め、選手一人ひとりの強みを引き出すキャプテンシーを発揮しながら、インカレや全日本選手権での上位進出を目指し日々練習を重ねる。

 

谷田さんも1年生の頃は、睡眠も食事も探り探り、自分の好きなようにやっていたそうです。節約を優先し、睡眠や食への出費はためらう。多くの大学生アスリートに共通する感覚かもしれません。

 

世界と戦う名門の課題は、意外にも「毎日の睡眠と食卓」にありました。だからこそTENTIALのサポートは製品の提供のみならず、睡眠を入口とした包括的なコンディショニング知識の提供とケアまでを含めた設計になったのです。

 

コンディショニング製品が日常を支える

 

コンディショニングサポートプロジェクトの始動後、まずTENTIALが提供したのが、チームの日常を支える3つのプロダクトです。

  • 「BAKUNE」のリカバリーウェア
  • 夏用掛け布団
  • リカバリーサンダル

その狙いは単なる物品支援ではありません。ハードな練習以外の時間を「リカバリーの時間」に変えること。「睡眠」「移動」といった日常そのものをコンディショニングに変える土台作りからスタートしました。

 

TENTIALのBAKUNEを愛用する谷田雅治選手

寝床には「BAKUNE」のリカバリーウェアと夏用掛け布団。愛用しているのは睡眠にこだわるという谷田さんたち選手だけではありません。「僕はあまりそういうものを信じるタイプではない」と言っていた原田監督も、初めて袖を通した夜のことをよく覚えているといいます。

「その日、びっくりするくらい気持ちよく眠れたんです。僕はそういうものを安易に信じるタイプではないんですけど、これは良いなと」

冨田監督の場合は、就寝スタイルそのものが変わりました。もともと暑がりで、寝間着の感触が気になり、下着だけで眠っていたそうです。それが今は、上下BAKUNEを着て寝るように。その実感が確信に変わったのが、コーチとして参加した2025 全米体操選手権にBAKUNEを持参した時のことです。

「アメリカは学生時代にも行ったことがあって、時差には苦労した記憶しかありません。それが今回、BAKUNEを持参したら初日から心地よく眠れて、自分でもびっくりしました」

体操場に目を移せば、多くの選手が練習の合間にリカバリーサンダルを履いています。着地の衝撃が大きく、足首を痛める選手が多い体操競技において、“足のケア”は欠かせません。長年アキレス腱の痛みを抱えてきた笠原さんにとって、日々の足への負担を軽減してくれるこのサンダルを履くことは、すでに毎日の生活の一部になっているといいます。

 

TENTIALのリカバリーサンダルを愛用する笠原有彩選手

もっとも、製品だけで全ての課題を解決できるかというと、必ずしもそうではありません。TENTIALが順天堂大学に提案したのは、“その先の計画”でした。

3年間で、コンディショニングをチームの文化として実装する──。この期間を通じてコンディショニングとは何かを知り、食事・睡眠・運動について学び、必要な情報を自ら取得し、日々の生活の中で実践できる状態を目指していく。最終的に見据えるのは、選手一人ひとりが「コンディショニングについて、自分の言葉で人に伝えられるレベル」です。

 

行動を変えるための意識改革

 

最初にTENTIALが着手したのは、単に知識を伝えるだけでなく、行動の前提となる「意識改革を起こす」ことでした。初年度に実施したセミナーは計5回。クイズ形式を取り入れるなど、選手が自分で考えたくなる工夫を凝らしながら、睡眠を入口に、栄養や疲労回復まで、競技力の土台を段階的に学ぶ場を重ねていきました。谷田さんの意識も、そこから動き始めたといいます。

 

TENTIALのセミナーを受ける谷田雅治選手

「アスリートとして最低限必要なことを知れたのが大きかったです。その結果として『睡眠や食事にお金をかけていいのかな』という大学生ならではの迷いが、『かけるところにはしっかりかけよう』に変わっていきました」

セミナーを通じてコンディショニングへの理解が深まるとともに、選手ひとりひとりの課題や生活リズムに合わせた個別のアドバイスを行うことで、各々が自分にあったコンディショニング方法を模索し、実践していく。こうしたきめ細やかなアプローチがチーム全体の意識を確実に変えていきました。実際、TENTIALのアンケートでコンディショニングを「意識・実践している」と答えた選手の割合は、取り組み開始時の28%から1年あまりで67%へ。約2.4倍に増加しています。

コンディショニングに対する順天堂大学体操競技部選手のアンケート結果2024年

コンディショニングに対する順天堂大学体操競技部選手のアンケート結果2025年

コンディショニングを「知る」期間を経て、取り組みは次のフェーズへ。自分の体を数字で「分かる」段階に進みます。血液検査や食事記録、体組成測定など。「データを介した伴走」は、選手たちの行動と、チームの空気をどう変えていったのか。そして史上初のアベック優勝に至るまで、チーム内ではどのような変化が起きていたのか。後編ではその裏側に迫ります。

 

順天堂大学体操競技部×TENTIAL【後編】:順天堂大学体操競技部「自分で整える」がチーム文化になるまで

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