腰痛を引き起こす原因として近年注目されているのがデスクワークです。デスクワークは長時間同じ姿勢を保つことで、猫背をはじめとした悪い姿勢を誘発しやすい点に注意しましょう。
姿勢の悪化は人間の腰椎が本来持っている湾曲を失わせます。デスクワークが腰痛の原因となる詳しいメカニズムや腰痛を緩和するのに必要なストレッチと正しい座り方を学んでいきましょう。
さらに、腰痛を和らげるのに役立つ椅子やクッションの選び方も紹介します。
腰痛におすすめの座椅子人気おすすめ10選!【テレワークやゲーム用などに】
監修者:佐々木 優太
理学療法士
アスリートのトレーニング、コンディショニングサポートをメインに活動。
【経歴】
・国体帯同(福井、茨城国体)
・クライミング世代別日本上位選手サポート
・BMX世代別日本代表選手サポート
・パラアスリートサポート
辛い腰痛に苦しめられている人の中には、悪い姿勢が習慣になっている人が多く見受けられます。腰椎はもともと、身体が受ける衝撃の吸収や頭を支えるといった役割を果たすために湾曲しており、この湾曲が失われることが腰痛の主な原因です。
悪い姿勢を継続すると腰椎の湾曲が失われ、椎間板と呼ばれる軟骨組織に大きな負担がかかります。椎間板に対する負担が増加した結果、痛みや倦怠感となって表れたものが腰痛です。
デスクワークをはじめとした姿勢を悪化させる習慣を改善していくことが、腰痛を取り除くうえで不可欠といえます。
腰に悪い座り方を理解したら、今度は腰への負担を軽減する座り方を学んでいきましょう。
椅子に腰かけるときには、2つのポイントを意識することで座り方を改善することが可能です。正しい座り方を習慣化したうえで、腰痛に悩まされることなく日々を過ごしましょう。
正しい座り方を以下の2つのポイントから解説します。
座って作業をするときに意識したいのが、椅子に深く腰掛けることです。座面の奥に座るのは猫背を予防する意味があります。
浅い位置に座ってしまうと深く座ったときに比べて安定性が低くなってしまい、猫背になりがちです。
背中を丸めることなく作業するには深く腰掛けた方が腰への負担を軽減することができます。また、浅く座ってしまうと背中を反って姿勢を安定させようとする人がいるため、これを防止するためにも深く腰掛けるのが有効です。
背中を丸めてしまうと腰痛の原因である猫背に近づきます。椅子に腰かけたときはなるべく上体を起こし、背筋を伸ばすことを心掛けましょう。背筋を伸ばす感覚がつかめない人は顎を引いて視線を前に向けてみてください。
このとき、背中の筋肉だけで背筋を伸ばそうとすると身体に力が入って長時間姿勢を維持するのが難しくなります。正しい座り方を継続するコツは骨盤を立てるを意識です。着席する際に前かがみになっておくと骨盤を立てやすいので試してみてください。
正しい座り方を実践しようとしても椅子が原因で悪い姿勢になってしまうことがあります。オフィスやプライベートな空間で使用する椅子は正しい姿勢を維持しやすいタイプを選びたいところです。
椅子が変わって腰痛の予防や改善に繋がれば、座りながらの作業が効率化されることでしょう。
椅子の正しい選び方以下の3つのポイントから解説します。
腰痛の改善と予防を前提とした椅子を選ぶとき、キーワードとして覚えておきたいのが腰部のせり出しです。人間の背骨はS字のカーブを描いており、このカーブに沿っている椅子の方が腰を痛めにくい傾向にあります。
反対に、全くカーブのない椅子は腰痛の予防や改善の効果が低めです。また、腰部がせり出し過ぎている椅子は腰への負担が増加する可能性がある点に注意しましょう。
腰部が過度にせり出していると背中の筋肉や背骨が圧迫されます。適度なカーブであればS字カーブをサポートしますが、せり出しの強い椅子は血行不良をはじめとした腰痛の原因となり得るのです。
椅子を選ぶ際には実際に座ってみて、自分の背骨のカーブと合っていることを確かめましょう。
ランバーサポートという言葉を初めて聞いた人はまずその意味を理解しましょう。椅子の背もたれに付いている小型のクッションがランバーサポートです。
背もたれのクッションによって背骨や背中の筋肉への圧力を緩め、腰痛を予防する効果が期待できます。
ただし、背骨のカーブの形状は人によって異なっているため、市販されている椅子に付属しているランバーサポートの全てが自分の背骨に合っているとは限りません。
そのため、ランバーサポートが後付け可能な椅子や取り外して別のものに取り換えられる椅子の方が腰痛の予防や改善がしやすいといえます。理想のランバーサポートを見極めるには深く腰掛けたとき背中にフィットするかが重要です。
腰部のせり出し具合が合っていても、ランバーサポートに違和感を覚える場合は腰痛対策に効果的な椅子とはいえない点に注意してください。
椅子は人間の体重を支える家具であり、長時間座る場合は体重の分散度合いが腰の痛みを左右することがあります。そこで注目したいのが座部の素材です。ウレタンクッションを素材として採用している椅子は体重を分散する能力が高いといえます。
ウレタンクッションは適度な硬さと体重を分散させる機能が両立した素材です。座部の素材が柔らかい方が腰への負担は少ないように思えるかもしれませんが、実際は異なります。柔らかすぎる素材の椅子に座っていると身体が深く沈み込んでしまうのです。
深く沈み込んでしまうということは身体の一点に圧力が集中することを意味します。圧力の集中は血行不良の要因のひとつです。適度に体重を分散させるウレタンクッション素材の椅子であれば、骨盤を立てた正しい姿勢で座りやすいのもメリットです。
姿勢の改善によるアプローチと同時に、腰が痛くなったときの対処法も知っておきましょう。
デスクワークをしている最中に腰痛を感じたときは、ストレッチで筋肉をほぐしてあげることが有効です。ストレッチの血行促進効果で腰痛の症状を緩和していきましょう。
それではオフィスで簡単にできるストレッチ方法を3つ紹介します。
凝り固まった腰の筋肉を前後に動かして血行を促進していきます。両手を後頭部で組んだら、背中をゆっくりと丸めて上体を前に倒してください。へそをしっかりと視認したら、今度はもとの体勢に戻っていきます。
後頭部に手を添えたとき、肩甲骨を寄せて背中の筋肉を伸ばすのがポイントです。
後頭部に両手を添える基本姿勢は腰の前後に動かすときと同様です。今度は前後ではなく、身体を左右のどちらかに倒していきます。右に倒す場合は左の腰の筋肉をしっかり伸ばすことを意識しましょう。
ゆっくり右に倒した後は、反対側も同様に行います。身体を真横に倒すことが、筋肉を効果的に伸ばすためのコツです。
最後に取り組みたいのは腰を横に捻じる運動です。両手を後頭部に添える基本姿勢はそのままに、まずは右側に大きく腰を捻りましょう。真後ろを向くことができたら、反対側に身体を捻ってください。
今回紹介したストレッチは椅子に座ったまま取り組むことができるので、デスクワークが習慣の人は定期的に取り組んでみましょう。
正しい座り方やストレッチが腰痛に対しても効果的であることが理解できたところで、次は「腰痛に効くツボ」について見ていきましょう。
正しいツボの取り方や押し方について詳しく解説していきます。
まず、紹介するのは「腎兪(じんゆ)」というツボです。
腎兪は腰だけでなく、全身の疲れの改善に効果があるツボです。全身の疲れがこのツボに現れるため、自分にどれだけ疲れがたまっているかを推し量る目安にもなります。
正しい腎兪の取り方としてはまず腰に手を当てます。
小学校のときに背丈の順で並び、前へ習えをした際に一番目前の人がやっているようなポーズのイメージです。
このときに、親指が当たっている場所が腎兪の位置です。
へその真反対の位置で背中の中央線から3cmほど離れた位置にあります。
背筋をしっかり伸ばし、親指に力を入れて3秒押す→離す、を3回繰り返しましょう。
次に紹介するツボは「肩井(けんせい)」です。
文字通り肩にあるツボで、肩こりにも効果を発揮してくれるツボです。
まず、肩井の正しい位置の取り方を紹介していきましょう。
肩井は肩の上部のちょうど中央あたりに位置しています。肩が凝ると逆側の手で肩を揉んでセルフマッサージを行いますが、ちょうどその位置にあるのが肩井です。
より正確にとるためには乳頭からまっすぐに上にいき、ちょうど肩の頂点に差し掛かるライン上にあります。
肩井の押し方は両手で同時に行います。
両肩の肩井を両手で押さえたら、肩の中央あたりを上から押さえつけるようにして押していきます。
5回を1セットとして、合計3セット行っていきましょう。
次に紹介する腰痛に効果的なツボは「崑崙(こんろん)」です。
崑崙は左右どちらか一方の背中や腰などが痛む軽度で初期段階の腰痛に効果があります。
慢性的な腰痛というよりも痛み始めたという人のほうが、より効果を見込むことができます。
崑崙は外くるぶしの付近にあります。
正しい位置の取り方としては外くるぶしの頂点から、ふくらはぎの裏側に指を沿わせて、アキレス腱とちょうどぶつかるところにあるのが崑崙です。
崑崙に親指を当て、その他の指でアキレス腱をつまむように持ち、親指で軽く3秒程度押して離す、という動作を3分程度続けましょう。
腰痛がよく現れるツボなので、腰痛持ちの人は崑崙が腫れている方もいます。
くれぐれも痛むほどには押さないように注意しましょう。
次に紹介するツボは「中封(ちゅうほう)」です。
中封は急性的な腰痛、つまりぎっくり腰によく効くとされるツボです。
また、前屈したときに背中のちょうど中央あたりが痛むという方にも効果があります。
中封は崑崙とは反対側の、内くるぶしの付近にあります。
中封の正しい取り方はまずつま先を上に向け、内くるぶし前方にある腱を浮かび上がらせます。この腱と内くるぶしの間を軽く押さえると、くぼみが出来ているのが分かります。
それが中封です。
押し方は中封に親指を当てて、優しくゆっくりと3秒程度押します。
押して離すして押す、という動作を3分程度継続しましょう。
中封においても、やはり強度が高すぎて痛むのは避けるべきですが、痛みと気持ち良さが共存する程度の強さで押してあげても構いません。
最後に紹介する腰痛に効果的なツボは「照海(しょうかい)」です。
照海は慢性的な腰痛持ちの人向けのツボです。また、背中下部の真ん中あたりが痛む人、骨盤の奥の方が痛むという人にも効果があります。
照海も中封と同じように内くるぶしの付近にあるツボです。
照海の正しい位置の取り方を紹介していきましょう。
まず、内くるぶしに手を当てて、そこから下に親指一本分下がったところにあるのが照海です。
照海の押し方は今までのツボ同様にゆっくりと3秒程度押します。
その後に一旦離して、またゆっくり3秒かけて押す、という動作を3分程度繰り替えし行います。
照海は経絡の流れを良くし、生命力を高めることでも知られているツボです。
腰痛が酷い場合は日頃座っている椅子にクッションを取り付けるというのも腰痛対策のひとつです。腰痛の緩和を目標とするのであれば、姿勢を正す効果があるクッションを選択しましょう。
骨盤を立てた正しい姿勢をキープするための機能が付いたクッションは現在の腰痛を緩和するだけでなく、将来の腰痛を予防する効果が期待できます。材質としては長時間座っても腰に負担がかかりにいくい低反発の素材が役立ちます。
座り心地の良さと腰痛の緩和を両立したクッションを選ぶように心がけてください。
腰痛とデスクワークに関する今回の記事を以下の3点にまとめます。
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