睡眠不足が及ぼすさまざまな影響と質の良い睡眠|西多昌規(早稲田大学睡眠研究所所長)

今回は早稲田大学の睡眠研究所所長の西多昌規氏に、睡眠についてインタビューを行いました。睡眠不足が及ぼすさまざまな影響から、『良い睡眠とは何か?』また、後半では、睡眠の質を「リカバリー」という観点で見たときに、どのようなことが重要なのかお話して頂きました。

今回は早稲田大学の睡眠研究所所長の西多昌規氏に、睡眠についてインタビューを行いました。睡眠不足が及ぼすさまざまな影響から、『良い睡眠とは何か?』また、後半では、睡眠の質を「リカバリー」という観点で見たときに、どのようなことが重要なのかお話して頂きました。

西多 昌規(にしだ まさき)


早稲田大学 スポーツ科学学術院 教授


早稲田大学 睡眠研究所 所長


早稲田大学 保健センター 副所長

西多 昌規(にしだ まさき)


早稲田大学 スポーツ科学学術院 教授


早稲田大学 睡眠研究所 所長


早稲田大学 保健センター 副所長

日本の睡眠課題とそれが与えるさまざまな影響

---テレビでは睡眠課題について多く取り上げられていますが、実際世界に比べて日本の睡眠課題は大きいのでしょうか?


 睡眠の国際的な調査はいくつかありますが、日本は世界的に見てもいちばん睡眠が短い状態が続いています。働き方改革といわれて睡眠の重要性が啓発されているにもかかわらず、睡眠時間が減らないまでも、そこまで増えてもいないというのが現実にあります。これには目に見えない忙しさというのがあり、仕事が終わった後も家事や趣味などに時間を費やすなど、何だかんだ睡眠を削って何かをやっている、そういう国民気質があるのかもしれないです。特に指摘されているのは30〜50代の女性の睡眠時間です。主要因としては男性が諸外国に比べて家事を手伝わないことが挙げられます。(2021年度版の経済協力開発機構(OECD)の調査)働く女性は家事も行い、身支度の時間も男性よりかかると思います。そのような事情があり、睡眠の重要性が昔に比べれば認識されているにもかかわらず、実際の睡眠時間の増加や睡眠の満足度の上昇にはあまり繋がっていないかなという印象を持っています。

---テレビでは睡眠課題について多く取り上げられていますが、実際世界に比べて日本の睡眠課題は大きいのでしょうか?


 睡眠の国際的な調査はいくつかありますが、日本は世界的に見てもいちばん睡眠が短い状態が続いています。働き方改革といわれて睡眠の重要性が啓発されているにもかかわらず、睡眠時間が減らないまでも、そこまで増えてもいないというのが現実にあります。これには目に見えない忙しさというのがあり、仕事が終わった後も家事や趣味などに時間を費やすなど、何だかんだ睡眠を削って何かをやっている、そういう国民気質があるのかもしれないです。特に指摘されているのは30〜50代の女性の睡眠時間です。主要因としては男性が諸外国に比べて家事を手伝わないことが挙げられます。(2021年度版の経済協力開発機構(OECD)の調査)働く女性は家事も行い、身支度の時間も男性よりかかると思います。そのような事情があり、睡眠の重要性が昔に比べれば認識されているにもかかわらず、実際の睡眠時間の増加や睡眠の満足度の上昇にはあまり繋がっていないかなという印象を持っています。

---睡眠課題が解決されていない中で、それが日本の社会にどのような影響を与えているのでしょうか?


 日本大学の内山真先生らの調査で、睡眠による問題で経済損失は、およそ年間3兆円に上るのではないかということがわかりました(1)。特にシフトワークの人は睡眠不足になってしまいがちで、それが事故につながる可能性があります。電力会社やガス会社といったインフラ系の産業では、シフトワークで働いている人も多く、そのような人たちは慢性的な睡眠不足に陥る危険性が高くなります。1947年に起こった、スリーマイル島原発事故はまさにその睡眠不足の不注意で夜中に起きてしまった事故です。こういった多大なる事故もあれば、目に見えない事故も起きています。  睡眠不足によるメンタルヘルスの不調が原因で病気になり、働けなくなってしまうなど、そのような健康被害的なものを含めると、実は睡眠の問題というのは本当に幅広いです。また自分では睡眠不足による影響がないと思っていても、実はあるかもしれないなど、さまざまな問題があると思います。

---睡眠課題が解決されていない中で、それが日本の社会にどのような影響を与えているのでしょうか?


 日本大学の内山真先生らの調査で、睡眠による問題で経済損失は、およそ年間3兆円に上るのではないかということがわかりました(1)。特にシフトワークの人は睡眠不足になってしまいがちで、それが事故につながる可能性があります。電力会社やガス会社といったインフラ系の産業では、シフトワークで働いている人も多く、そのような人たちは慢性的な睡眠不足に陥る危険性が高くなります。1947年に起こった、スリーマイル島原発事故はまさにその睡眠不足の不注意で夜中に起きてしまった事故です。こういった多大なる事故もあれば、目に見えない事故も起きています。  睡眠不足によるメンタルヘルスの不調が原因で病気になり、働けなくなってしまうなど、そのような健康被害的なものを含めると、実は睡眠の問題というのは本当に幅広いです。また自分では睡眠不足による影響がないと思っていても、実はあるかもしれないなど、さまざまな問題があると思います。

---睡眠不足が年単位で蓄積した場合、将来的な病気や生活習慣病に繋がる可能性はありますか?


 睡眠不足あるいは短時間睡眠の人は生活習慣病やうつ病など、さまざまな病気のリスクが高いという報告がいくつもあります。またどの研究を見ても、睡眠時間が短い人だけでなく、長い人にもリスクがあるという結果がでています。7時間ほどの睡眠の人がちょうど病気のリスクが少なく、6時間〜8時間ほどの睡眠の人のリスクを1とすると、10時間以上の睡眠の人はリスクが男性で1.8倍、女性で1.7倍高い傾向を示すという結果もあります(2)。しかし睡眠には個人差がかなりあり、その時のその人の状況によっても多少変わります。人間というのは必ずしも8時間寝れないとダメというわけではなく、個人差と柔軟性があります。例えば調子が良いときの仕事などです。仕事に集中している、あるいは楽しめていると睡眠不足でもやっていけるという経験がある方はいるのではないでしょうか。しかし睡眠時間が毎日3時間で続くと、そのうち心も体も持たなくなってしまうでしょう。このように、ある時期は短時間睡眠でも大丈夫だが、この条件では睡眠時間が短いとまずいといったばらつきがあるのです。

---睡眠不足が年単位で蓄積した場合、将来的な病気や生活習慣病に繋がる可能性はありますか?


 睡眠不足あるいは短時間睡眠の人は生活習慣病やうつ病など、さまざまな病気のリスクが高いという報告がいくつもあります。またどの研究を見ても、睡眠時間が短い人だけでなく、長い人にもリスクがあるという結果がでています。7時間ほどの睡眠の人がちょうど病気のリスクが少なく、6時間〜8時間ほどの睡眠の人のリスクを1とすると、10時間以上の睡眠の人はリスクが男性で1.8倍、女性で1.7倍高い傾向を示すという結果もあります(2)。しかし睡眠には個人差がかなりあり、その時のその人の状況によっても多少変わります。人間というのは必ずしも8時間寝れないとダメというわけではなく、個人差と柔軟性があります。例えば調子が良いときの仕事などです。仕事に集中している、あるいは楽しめていると睡眠不足でもやっていけるという経験がある方はいるのではないでしょうか。しかし睡眠時間が毎日3時間で続くと、そのうち心も体も持たなくなってしまうでしょう。このように、ある時期は短時間睡眠でも大丈夫だが、この条件では睡眠時間が短いとまずいといったばらつきがあるのです。

---ビジネスパーソンが睡眠に投資したほうがいい理由はありますか?


 ビジネスというのはリーダーシップやスピード感、判断力、交渉力など、総合的な能力が求められます。そういった高度な社会性を必要とするスキルはやはり睡眠がかなり影響することが明らかとなってきており、慢性的な睡眠不足だと判断が鈍る、あるいは博打的な判断をしがちになるという調査報告もあります。また睡眠不足だと感情的にもイライラしやすくなることもあり、それは仕事を行う上で必要となるコミュニケーションの点でよくないでしょう。つまり睡眠不足による感情の不安定性やエネルギー不足が、ビジネススキルに影響を及ぼします。また社会性にも影響があり、睡眠が悪いと孤独がちになり、孤立傾向になるという報告もあります。さらに睡眠不足だとよりハイリスク・ローリターンと言うような、賭博的なチョイスをする傾向にあるなど、そういった研究もさかんに行われています。

---ビジネスパーソンが睡眠に投資したほうがいい理由はありますか?


 ビジネスというのはリーダーシップやスピード感、判断力、交渉力など、総合的な能力が求められます。そういった高度な社会性を必要とするスキルはやはり睡眠がかなり影響することが明らかとなってきており、慢性的な睡眠不足だと判断が鈍る、あるいは博打的な判断をしがちになるという調査報告もあります。また睡眠不足だと感情的にもイライラしやすくなることもあり、それは仕事を行う上で必要となるコミュニケーションの点でよくないでしょう。つまり睡眠不足による感情の不安定性やエネルギー不足が、ビジネススキルに影響を及ぼします。また社会性にも影響があり、睡眠が悪いと孤独がちになり、孤立傾向になるという報告もあります。さらに睡眠不足だとよりハイリスク・ローリターンと言うような、賭博的なチョイスをする傾向にあるなど、そういった研究もさかんに行われています。

西多先生の考える質の良い睡眠とは?

---生活者の中では、自分が良い睡眠をとれているのか?はたまた悪い睡眠状態なのかというのが分からない方も多いと思うのですが、日常の中でどういう状態だと良い睡眠がとれているといえますか?


 睡眠障害としての不眠症は、睡眠時間が何時間未満といった基準はなく、かなりアバウトな定義となっています。日中の社会的機能の障害がなければ、多少不眠や寝不足があっても睡眠障害があるとは判断されません。つまり、夜の睡眠だけの様子を見ていても不眠症の診断がつかず、日中の活動に与える影響まで見る必要があります。例えば、ビジネスパーソンで考えるならば、日中の眠気も判断の一因になるでしょう。ビジネスパーソンの睡眠の重要性は年代によって分かれてきていて、若い人は夜が遅くて、朝起きられない人が他年代より多い傾向にあります。逆に年齢を重ねていくと、朝早く目が覚め、夜も早く眠くなります。よくビジネスのゴールデンタイムは午前中と言いますが、若い人はそうでもない場合が多く、夕方から夜にかけて調子がいいという人は多いと思います。逆に年齢を重ねると午前中のほうが集中力高く働けるという人が増えてくるかと思います。これを前提に、日中の調子に影響があるかどうかを判断するべきです。例えば若い人で普段は夕方が一番集中力が高いという人が、その時間帯でも頭がパッとしないなという症状があれば、もしかしたら睡眠に原因があるかもしれません。よくあるサインとしては、頭が重いとか朝の疲れが取れないといったことです。これは睡眠が少し浅く、深い睡眠が少なくなっていることを示唆するサインかもしれません。その中でも夜型の人は、朝つらいのが当たり前であるため、それとどう違うかを判別するのに、主観的には難しい場合が多いかもしれないです。

---生活者の中では、自分が良い睡眠をとれているのか?はたまた悪い睡眠状態なのかというのが分からない方も多いと思うのですが、日常の中でどういう状態だと良い睡眠がとれているといえますか?


 睡眠障害としての不眠症は、睡眠時間が何時間未満といった基準はなく、かなりアバウトな定義となっています。日中の社会的機能の障害がなければ、多少不眠や寝不足があっても睡眠障害があるとは判断されません。つまり、夜の睡眠だけの様子を見ていても不眠症の診断がつかず、日中の活動に与える影響まで見る必要があります。例えば、ビジネスパーソンで考えるならば、日中の眠気も判断の一因になるでしょう。ビジネスパーソンの睡眠の重要性は年代によって分かれてきていて、若い人は夜が遅くて、朝起きられない人が他年代より多い傾向にあります。逆に年齢を重ねていくと、朝早く目が覚め、夜も早く眠くなります。よくビジネスのゴールデンタイムは午前中と言いますが、若い人はそうでもない場合が多く、夕方から夜にかけて調子がいいという人は多いと思います。逆に年齢を重ねると午前中のほうが集中力高く働けるという人が増えてくるかと思います。これを前提に、日中の調子に影響があるかどうかを判断するべきです。例えば若い人で普段は夕方が一番集中力が高いという人が、その時間帯でも頭がパッとしないなという症状があれば、もしかしたら睡眠に原因があるかもしれません。よくあるサインとしては、頭が重いとか朝の疲れが取れないといったことです。これは睡眠が少し浅く、深い睡眠が少なくなっていることを示唆するサインかもしれません。その中でも夜型の人は、朝つらいのが当たり前であるため、それとどう違うかを判別するのに、主観的には難しい場合が多いかもしれないです。

---主観的ではなく、客観的に睡眠の質をみる場合、どのような値が重要になってきますか?


 睡眠研究において、もっとも標準的な手法は睡眠ポリグラフです。脳波をつけて記録を取りますが、そこではじめて深い睡眠や浅い睡眠、夜中どれだけ起きていたのかなどが完全に数値化されます。睡眠ポリグラフで深い睡眠が増えた、途中で目が覚めるのが数値で少なくなったといった現象が生じれば、睡眠が改善したといえるでしょう。ただ、睡眠をより広い意味で捉えた場合、睡眠の評価というのは脳から記録される脳波だけでなく、自律神経活動の影響も重要であると考えています。自律神経とは、いわゆる交感神経、副交感神経のことです。一般的に、副交感神経の高まりがリラックス状態を誘導することから、睡眠中は副交感神経が優位の状態が好ましいです。しかし、例えば寝る前に運動をすると、睡眠中も交感神経の活動が高くなってしまいますが、興味深いことにそれは脳波にはあまり現われてこない場合もあります。つまり、脳波上は深い睡眠は変わらないが、交感神経の活動が高いままということです。これは、睡眠の質という観点ではマイナスに作用すると考えています。スポーツ選手等の場合、大抵は精神的ストレスがなければよく寝れることが多いですが、中には疲労が蓄積して眠れなくなってくる人もいます。このことから、睡眠の良し悪しを判断する値は、睡眠ポリグラフの値だけでもないと感じてます。そのため、交感神経や副交感神経の活動も、疲労回復という意味では関与していると思います。

---主観的ではなく、客観的に睡眠の質をみる場合、どのような値が重要になってきますか?


 睡眠研究において、もっとも標準的な手法は睡眠ポリグラフです。脳波をつけて記録を取りますが、そこではじめて深い睡眠や浅い睡眠、夜中どれだけ起きていたのかなどが完全に数値化されます。睡眠ポリグラフで深い睡眠が増えた、途中で目が覚めるのが数値で少なくなったといった現象が生じれば、睡眠が改善したといえるでしょう。ただ、睡眠をより広い意味で捉えた場合、睡眠の評価というのは脳から記録される脳波だけでなく、自律神経活動の影響も重要であると考えています。自律神経とは、いわゆる交感神経、副交感神経のことです。一般的に、副交感神経の高まりがリラックス状態を誘導することから、睡眠中は副交感神経が優位の状態が好ましいです。しかし、例えば寝る前に運動をすると、睡眠中も交感神経の活動が高くなってしまいますが、興味深いことにそれは脳波にはあまり現われてこない場合もあります。つまり、脳波上は深い睡眠は変わらないが、交感神経の活動が高いままということです。これは、睡眠の質という観点ではマイナスに作用すると考えています。スポーツ選手等の場合、大抵は精神的ストレスがなければよく寝れることが多いですが、中には疲労が蓄積して眠れなくなってくる人もいます。このことから、睡眠の良し悪しを判断する値は、睡眠ポリグラフの値だけでもないと感じてます。そのため、交感神経や副交感神経の活動も、疲労回復という意味では関与していると思います。

---入眠のメカニズムについて、お風呂に入ると良いと言われていますが、入眠までの過程で体の中ではどのようなことが起こっているのですか?


 入眠は脳や脂肪、筋肉、内臓の温度である深部体温が外に逃げるときに眠くなるということが分かっています。そのためよくお風呂上がりに眠くなるというのは、(リラックス効果もありますが)お風呂に入ると体の深部体温が上がり、その上がった深部体温を外に逃がそうとするためです。またうまい具合に、お風呂に入ると毛細血管が開くため、熱が逃げやすくもなります。そのため、この放熱というのは入眠にとって、一つのキーとなる概念になります。

---入眠のメカニズムについて、お風呂に入ると良いと言われていますが、入眠までの過程で体の中ではどのようなことが起こっているのですか?


 入眠は脳や脂肪、筋肉、内臓の温度である深部体温が外に逃げるときに眠くなるということが分かっています。そのためよくお風呂上がりに眠くなるというのは、(リラックス効果もありますが)お風呂に入ると体の深部体温が上がり、その上がった深部体温を外に逃がそうとするためです。またうまい具合に、お風呂に入ると毛細血管が開くため、熱が逃げやすくもなります。そのため、この放熱というのは入眠にとって、一つのキーとなる概念になります。

---深部体温についてお話していただきましたが、深部体温の落ち方は、睡眠体験の良さを考えた時にどういう風な考え方になりますか?


 深部体温の低下が急であるほど、深い睡眠のスイッチは入りやすくなります。主に睡眠の深いノンレム睡眠の深度や質に関わっているといえるでしょう。そのため、深部体温の低下は非常に注目すべき現象だと思います。

---深部体温についてお話していただきましたが、深部体温の落ち方は、睡眠体験の良さを考えた時にどういう風な考え方になりますか?


 深部体温の低下が急であるほど、深い睡眠のスイッチは入りやすくなります。主に睡眠の深いノンレム睡眠の深度や質に関わっているといえるでしょう。そのため、深部体温の低下は非常に注目すべき現象だと思います。

---深部体温の低下は睡眠の質を見る上でも有用かもしれないということですね


 深部体温の「低下」はあくまで入眠です。入眠には深部体温を下げるのが大事で、そのためにはお風呂に入った方が良いということもあるのですが、あくまで入眠においてみられることです。そのため、睡眠の維持や夜中起きてしまうこと、また明け方の睡眠ということに関しての深部体温は、今一つ見過ごされています。睡眠の維持や睡眠の後半に関しては、深部体温が低下するという変化よりも、深部体温が低い状態を維持するということが大事になってくると思います。なぜなら、夜中の体温というのは基本的に低いからです。夜中に暑くて汗をかいてしまうと、途中で起きてしまう経験をしたことがある方もいると思いますが、深部体温に関しては、入眠時に下がること、そして入眠後は低い状態を維持することが重要だといえます。

---深部体温の低下は睡眠の質を見る上でも有用かもしれないということですね


 深部体温の「低下」はあくまで入眠です。入眠には深部体温を下げるのが大事で、そのためにはお風呂に入った方が良いということもあるのですが、あくまで入眠においてみられることです。そのため、睡眠の維持や夜中起きてしまうこと、また明け方の睡眠ということに関しての深部体温は、今一つ見過ごされています。睡眠の維持や睡眠の後半に関しては、深部体温が低下するという変化よりも、深部体温が低い状態を維持するということが大事になってくると思います。なぜなら、夜中の体温というのは基本的に低いからです。夜中に暑くて汗をかいてしまうと、途中で起きてしまう経験をしたことがある方もいると思いますが、深部体温に関しては、入眠時に下がること、そして入眠後は低い状態を維持することが重要だといえます。

---夜中の体温維持も重要ということですね


 そうですね、睡眠の前半に深い睡眠があるので、どうしてもそこばかりに注目が集まってしまいますが、睡眠の維持には夜中の体温維持も大事だと思います。

---夜中の体温維持も重要ということですね


 そうですね、睡眠の前半に深い睡眠があるので、どうしてもそこばかりに注目が集まってしまいますが、睡眠の維持には夜中の体温維持も大事だと思います。

良い睡眠を取るための睡眠環境

---良い睡眠を取るために、身の周りのものはどういうところに気をつければ良いですか?


 やはり静かで多少暗めの環境というのは重要です。またベッドで何か仕事をしたり、本やスマホを見る人もいると思いますが、基本的にベッドや寝室は寝るためだけにあるようなスタンスが望ましいです。若い人で一人暮らしをしていると、寝る部屋と活動する部屋が一緒になってしまっている方もいると思います。それは仕方がないことですが、なるべくシンプルにした方がいいと思っています。スマホは仕方がないとしても、ゲーム機など、刺激となるようなものはベッドの近くには置かないようにして欲しいですね。

---良い睡眠を取るために、身の周りのものはどういうところに気をつければ良いですか?


 やはり静かで多少暗めの環境というのは重要です。またベッドで何か仕事をしたり、本やスマホを見る人もいると思いますが、基本的にベッドや寝室は寝るためだけにあるようなスタンスが望ましいです。若い人で一人暮らしをしていると、寝る部屋と活動する部屋が一緒になってしまっている方もいると思います。それは仕方がないことですが、なるべくシンプルにした方がいいと思っています。スマホは仕方がないとしても、ゲーム機など、刺激となるようなものはベッドの近くには置かないようにして欲しいですね。

---枕、マットレス、パジャマなど、寝具は適当なものでいいのか、こだわって選べばそれなりに睡眠が変わるのか、先生はどう考えていますか?


 昔は選択肢が少なかったり、あるいは非常に高いものしかなかったということがありますが、今は選択肢も多いため、ある程度選んだほうがよいと思います。予算内で自分に合うものを選ぶようにしましょう。自分に合うものというのはなかなか見つけるのが難しいですが、今は布団や枕の相談ができるところもあるため、そのようなところで相談する、あるいは高反発マットレスでも安いものもあります。硬いマットレスが好きな人もいれば、柔らかいマットレスが好きな人もいると思います。ただ、一般的には多少寝返りがうてて夜の放熱を促進するような高反発のマットレスがいいのではないでしょうか。特に体格の良い人は、マットレスがあまり柔らかいと体が曲がってしまうため、多少硬めのマットレスを、逆に体が華奢な人は多少ふわふわしたマットレスでもいいのではないかと思います。予算の範囲内で店員さんなどに話を聞いてみると違うかもしれませんね。

---枕、マットレス、パジャマなど、寝具は適当なものでいいのか、こだわって選べばそれなりに睡眠が変わるのか、先生はどう考えていますか?


 昔は選択肢が少なかったり、あるいは非常に高いものしかなかったということがありますが、今は選択肢も多いため、ある程度選んだほうがよいと思います。予算内で自分に合うものを選ぶようにしましょう。自分に合うものというのはなかなか見つけるのが難しいですが、今は布団や枕の相談ができるところもあるため、そのようなところで相談する、あるいは高反発マットレスでも安いものもあります。硬いマットレスが好きな人もいれば、柔らかいマットレスが好きな人もいると思います。ただ、一般的には多少寝返りがうてて夜の放熱を促進するような高反発のマットレスがいいのではないでしょうか。特に体格の良い人は、マットレスがあまり柔らかいと体が曲がってしまうため、多少硬めのマットレスを、逆に体が華奢な人は多少ふわふわしたマットレスでもいいのではないかと思います。予算の範囲内で店員さんなどに話を聞いてみると違うかもしれませんね。

---着るものに関しては何かありますか?例えば若者だと寝るときの衣服として、ジャージやスウェット、Tシャツで寝ている人も多い方かと思います


 そういう人がほとんどだと思っています。マットレスにおいては、最近ではさまざまな種類が出てきましたが、パジャマに関してはこれまでほとんど選択肢がなく、何を使って良いのかわからなかったと思います。ただ、最近では機能性をもつパジャマの選択肢が増えてきましたので、なんでもいいというわけでもないと思いますね。また、マットレスが何万〜何十万円するのに比べ、ウエアはそこまで高くはないので、取っ掛かりやすいでしょう。とにかく昔は選択肢がなくてどうしようもなかったのに対し、今はいろいろ比べられます。そのためマットレスよりも手軽に始められる睡眠改善策なのかなと思います。

---着るものに関しては何かありますか?例えば若者だと寝るときの衣服として、ジャージやスウェット、Tシャツで寝ている人も多い方かと思います


 そういう人がほとんどだと思っています。マットレスにおいては、最近ではさまざまな種類が出てきましたが、パジャマに関してはこれまでほとんど選択肢がなく、何を使って良いのかわからなかったと思います。ただ、最近では機能性をもつパジャマの選択肢が増えてきましたので、なんでもいいというわけでもないと思いますね。また、マットレスが何万〜何十万円するのに比べ、ウエアはそこまで高くはないので、取っ掛かりやすいでしょう。とにかく昔は選択肢がなくてどうしようもなかったのに対し、今はいろいろ比べられます。そのためマットレスよりも手軽に始められる睡眠改善策なのかなと思います。

---先生の中でパジャマ選びでアドバイスできることはありますか?


 前提として、パジャマはスウェットよりいいだろう、ということは思います。またパジャマ選びにおいては、試着して自分に合っているかどうかを確かめると良いと思います。マットレスは居住環境で導入できないという人もいると思いますが、パジャマは場所を取りませんよね。

---先生の中でパジャマ選びでアドバイスできることはありますか?


 前提として、パジャマはスウェットよりいいだろう、ということは思います。またパジャマ選びにおいては、試着して自分に合っているかどうかを確かめると良いと思います。マットレスは居住環境で導入できないという人もいると思いますが、パジャマは場所を取りませんよね。

参考文献


(1)内山真 2012. 睡眠障害の社会生活に及ぼす影響と経済損失 . 日本精神科病院協会雑誌、31 : 61-67.


(2)Svensson T, Inoue M, Saito E et al. The Association Between Habitual Sleep Duration and Mortality According to Sex and Age: The Japan Public Health Center-based Prospective Study. J Epidemiol. 2021 Feb 5;31(2):109-118.

参考文献


(1)内山真 2012. 睡眠障害の社会生活に及ぼす影響と経済損失 . 日本精神科病院協会雑誌、31 : 61-67.


(2)Svensson T, Inoue M, Saito E et al. The Association Between Habitual Sleep Duration and Mortality According to Sex and Age: The Japan Public Health Center-based Prospective Study. J Epidemiol. 2021 Feb 5;31(2):109-118.