Athlete Relation

【後編】TENTIAL×MYNOトレーニングキャンプ in 福岡 レポート
人生が変わるコンディショニングの正体

 

TENTIALがサポートし、阿久津洋介氏が指導するMYNOトレーニングキャンプ。このキャンプを主催する内藤選手を加えた3人が、フィールドの上で言葉を交わしました。(キャンプの様子については記事前編「サッカーボールは使わない。“整える”ための集中合宿」をご覧ください)

 

 

右:内藤洋平/MYNOトレーニングキャンプ主催者
1988年生まれ、神奈川県出身。京都サンガF.C.、ギラヴァンツ北九州を経て、現在は鎌倉インターナショナルFC所属。2019年にはキャプテンとしてJ3優勝・J2昇格に導いた。福岡で日本初のソサイチ専用コート「MYNO FIELD」を立ち上げ、後進の育成にも力を入れる。

中央:阿久津洋介/パフォーマンスコーチ
国際武道大学大学院修了、スポーツ医科学修士。サッカー日本代表をはじめ、国内外の多くのプロアスリートのコンディショニングを指導するパフォーマンスコーチ。前職で7年間プロ選手を指導した後に独立。トレーニングから栄養・リカバリーまで、選手ごとに最適化したサポートを行う。

左:舟山健太/TENTIAL執行役員 CRO(Chief R&D Officer)、コンディショニング研究所 所長
東京大学大学院薬科学研究科で博士号(Ph.D.)取得。大手製薬会社で創薬研究に従事した後、2022年にTENTIALへ参画。現在は執行役員CROとして研究開発を統括する。フランス式キックボクシング「サバット」の日本代表として、世界選手権でメダルを獲得している現役アスリートでもある。

 

 

天井を見せてあげる場所

 

—— まず3人の立場とこのキャンプの関係性を、整理させてください。内藤さん、MYNOトレーニングキャンプは、そもそも何を目的として始めたものですか?


内藤 元々は、オフシーズンに選手たちが集まって自主練を一緒にやろう、というところから始まったんです。2023年12月に初開催しました。ただやっぱり、選手それぞれ身体も、年齢も、環境も違うので、自分の個性や特性に合った準備の仕方をシーズン前に学ぶ必要性があるなと感じていて。そのきっかけを提供できる場所にしていったのが、今のMYNOトレーニングキャンプです。


—— 参加者は基本的にJリーガーですか?


内藤 そうですね。Jリーガーが中心で、過去には大学生や、今僕がプレーする社会人サッカーリーグの選手も参加してくれています。基本的には選手の繋がりや、阿久津さんからの紹介などで興味を持ってくれた選手に声をかけています。


—— 阿久津さんには初回から指導をお願いしたんですか?


内藤 はい、初回からです。僕が北九州にいた頃に、阿久津さんのパーソナルトレーニングをオンラインで受けていたんです。その時に自分の引き出しがすごく増えた感覚があって、このキャンプの指導は絶対に阿久津さんにしてもらいたいと思ったんです。阿久津さんの指導を受けられるというのが、このキャンプの大きな価値になっています。
阿久津 このキャンプは僕の指導だけではなくて、調理師さんをお招きしてアスリートのための食事も提供するし、メーカーから最新のトレーニング機材、治癒機器なども提供してもらっています。今回は僕からTENTIALに声をかけて、睡眠指導もしてもらいました。コンディショニングに必要なものを、この3日間で集中して提供する。しかもトップアスリートと同じ水準のものを。若手選手たちに、天井を見せてあげたいんです。


——天井を見せてあげるというのは?


阿久津 今回参加してくれた選手の場合、トレーニングの環境面でトップ選手とはどうしても差が出てしまう。そのギャップを早めに知ってもらいたいんです。トップ選手がどんな環境でどんなトレーニングをしているのか、将来的にやらなければいけないことを知ることは成長する上で必要だと思っています。だって、見えないものに向かうのは難しいじゃないですか。

 

 

 

 

必殺技を持たないトレーナー

 

—— 阿久津さんの経歴について、詳しく教えてください。

 

内藤&舟山 それ、確かに知りたい(笑)。

 

阿久津 千葉の国際武道大学という体育大学の大学院を出た後、大学で講師を2年ほどやっていて、その後、専門学校で教えたりもしていました。大学で講師をしていた時に、サッカー日本代表の選手をサポートしていたパーソナルトレーナーの方と出会ったんです。それでその方が会社を立ち上げるタイミングで「一緒にやらないか」と声をかけてもらって。その会社には7年ほど在籍して、プロアスリートの指導もしていました。実は去年独立したばかりなんです。

 

—— 今は何人くらいの選手をサポートされているんですか?

 

阿久津 国内外含めて数十名ですね。年間で契約している選手は、彼らの試合をリアルタイムで視聴して、試合後に気づいた点をフィードバックして、1週間のトレーニングメニューも考えています。

 

舟山 数十名はすごい!でも、海外選手のサポートもしているということは……。

 

阿久津 試合後すぐにフィードバックを見てもらいたいから、夜中に試合を見て、そのまま朝にはメールを送るんです。その姿を見た妻から「サッカー本当に好きなんだね」と言われて。いや仕事だよって(笑)。

 

—— 阿久津さんの指導が、トップアスリートから求められる理由ってなんだと思いますか?

 

阿久津 たぶん、都合がいいからだと思います。

 

—— 都合がいい、とは?

 

阿久津 僕のようなトレーナーって、みんな必殺技を持っているんですよ。あの人といえばこのトレーニングというものがある。コンタクトで身体を当てるのが上手くなる、足がすごく速くなる、めちゃくちゃウェイトが持てる、といった具合にです。

 

舟山 何々式みたいなやつですか?

 

阿久津 そう。リカバリーウェアならBAKUNEみたいな感じで、わかりやすい得意分野のある方はやっぱり人気なんです。でも僕にはそれがない。必要なものを、必要なタイミングで、必要とする選手に伝える。選手が「俺それやりたくない」って時はやらないし、でも最終的に必要だったら他のものと組み合わせて提案する。フィジカルトレーニングも、動作系もやるし、怪我への対応も含めてリカバリーやコンディショニングのサポートもします。手札が多いので、選手に合わせてオーダーメイドのサポートをするんです。だから都合がいいんだろうなと思ってます(笑)。

 

内藤 阿久津さんは、引き出しの幅と知識の深さが違うんですよ。同じ課題を投げかけても、返ってくる量と深みと、アプローチの仕方がいくつもある。「この選手にはこっち」「あの選手にはこっち」みたいに、パターンがたくさんあるから、どの選手がトレーニングを受けても何かしら持ち帰れる。そういう手応えがあるんです。

 

 

相手が最後に何を得たか、がすべて

 

—— 舟山さんは、今回はキャンプの全行程に参加していますが、見ていてどうでしたか?


舟山 阿久津さんのメニューって、俯瞰してみると走るための土台というか、人間としての基礎中の基礎を作るトレーニングだなと感じました。この土台がしっかり整っていると、その上に積み重ねるものの精度も上がるし、結果的に能力向上を一番効率よくできる。それってまさに、TENTIALのコンディショニングに対する考え方と一緒です。そして阿久津さん、コンディショニングにめちゃくちゃ詳しい。これまで出会ってきた中で一番と言えます。


阿久津 ありがとうございます。


舟山 持っている知識を全部出したくなる方って多いじゃないですか。ただそれって、無駄なことをたくさん喋っているパターンも多いなと感じていて。でも阿久津さんは、人を見て伝える量も言い方も変えている。例えば僕と喋っている時には、専門用語をバンバン使ってくるけど、選手の前になると急に使わなくなる。この選手にはこの言葉、こっちの選手には別の言葉と、人によって伝え方を変えていたんですよね。


—— 舟山さんも同じタイプですよね?昨日のセミナーも、事前に用意していたプログラムを、選手に合わせてその場でカスタマイズしていた印象です。


舟山 そうかもしれないですね。結局、こっちが何を伝えたいかじゃなくて、相手が最後に何を得たかがすべてなので。理解してもらえなかったら、伝えていないことと同じだなって。


阿久津 ですよね。その時間が無駄じゃなかったな、と思ってもらいたい。僕も、その一心ですね。

 

 

 

なぜTENTIALなのか

 

—— 今回のキャンプでは、阿久津さんからTENTIALにサポート依頼がありました。なぜTENTIALに声をかけてくれたんですか?


阿久津 トレーニングって、その目的を理解した上で行うことが大事だと思うんです。身体の構造やそのトレーニングが筋肉にどうアプローチするか、そういったことを理解して細部にちゃんとこだわることが重要だと思っています。僕は職業柄いろいろなメーカーさんと話をしますが、舟山さんはダントツで知識量がすごいし細部に対するこだわりも強い。そして、真摯に仕事をされている方だな、という印象があった。サポートしてくれるなら、どこの会社でもいいというわけではないんです。僕は信頼できる方と組みたいんです。


—— ちなみに阿久津さんとBAKUNEとの出会いは?


阿久津 以前、サポートしているサッカー日本代表の選手から「TENTIALってどうなの?」と聞かれたことがあり、知り合いを介してTENTIALの方を紹介してもらったんです。それで僕も使ってみて、感覚がすごく良かった。それがきっかけで舟山さんと出会いました。ここまでオタク的に詳しい人ってあんまり多くないな、と驚いたことを覚えています。


舟山 いや、阿久津さんに言われたくないですね(笑)。


阿久津 まあ、類は友を呼ぶということですよ。でも、ある程度レベルが上のアスリートって、オタクしかいないと僕は思っていて。テクニックのオタクや、フィジカルのオタク、睡眠やコンディショニングのオタクだったり。プロフェッショナルって、日本語に置き換えたらオタクだと思うんです。で、そういう人は、適当なことは絶対にしないし、自分にこだわりがあって、仕事にも愛情がすごくある。そんなこだわりを持っている人同士が関わると、いい相乗効果が絶対あるはずなんです。


—— 舟山さんは、声をかけられて、このキャンプにどんな価値を提供しようと思いましたか?


舟山 まずは純粋に阿久津さんの力になりたいと思いました。実は阿久津さんには、TENTIAL製品のモニターのようなこともお願いしていて。毎回、「そんなところまで見るんだ」ってびっくりするくらい細かいフィードバックがある。それが製品のクオリティを上げる上ですごく役立っています。コンディショニングって、年齢を重ねた時に初めて気づくことが多くて、「これ10年前からやっていたらな」って思うことってあるじゃないですか。今回集まってくれている若手・中堅の選手たちに、知っておいた方がいいことを早いタイミングで伝えられるっていうのは、すごく価値があるなと。そういう活動はTENTIALとしても広げていきたいので、ぜひ協力したいと思いました。


—— トレーニング中にも「15年前に知りたかった」という言葉が出ましたよね。


内藤 僕が練習中に発した言葉ですね(笑)。いや、もう毎回思うんです。若いうちに知っておけば、可能性も選択肢も変わっただろうなって。そのことを若手に伝えていくのが、僕らの使命だと感じています。

 

 

 

トップ選手との差はどこにあるのか

 

—— トップ選手になれるかどうかの差は、今回のキャンプで得られるような知識にもあると思いますか?


阿久津 知識の有無というよりは、いろいろなものにどれだけこだわれるか、だと思います。こだわるって、結局、継続力なんですよね。いいものを継続できるかどうか。あとは、トレーニングしている動作を、競技につながる感覚としてイメージできるかということです。文法を知っていても上手に英語を喋れるとは限りませんよね。それと同じで、トレーニングも「どういうシーンでこの動きが使えるか」を、解像度高く明確にイメージできるかがトップ選手の資質だと思います。その理想のイメージに向かって、トレーニングで反復して動作の精度を高めていく。それをこだわって続けられる継続力があるのが、トップアスリートかなと。


—— そういったトップアスリートはコンディショニングへのこだわりも強いと思いますか?


阿久津 こだわる選手は多いですね。一つにこだわれる人って、どんどん深みが出てくるんです。トレーニングで精度の高い動作ができるようになったら、今度はその再現性を確実にするためにコンディショニングにも力を入れる。睡眠も食事もそうですし、普段の行動の組み立て方も含めて、コンディショニングに対する意識が高くなるんです。
内藤 僕は決してトップの選手ではありませんでした。じゃあどこでトップとの差を縮めるかと考えたら、人がやっていないことに対して時間を割くことだと思ったんです。トレーニングはみんなやるけど、睡眠などのコンディショニングは、なかなか興味を持ちづらいですよね。だから自分は、コンディショニングで差を縮められないかと常に考えていました。15年前に阿久津さんに出会っていれば、僕は今頃ワールドカップに出ていたかもしれないです(笑)。


—— コンディショニングの差が、選手の人生を変えることはあると思いますか?


阿久津 あります。コンディションって、調子の波をコントロールすることだと思うんです。100%を120%にするんじゃなくて、80%を切らないようにするためのものでもある。例えばレギュラー選手が風邪をひいて1試合休んでしまい、その試合には別の選手が出場して活躍する。そうすると、風邪をひいた選手はそのままずっと出番がなくなることだってあるんです。トップで活躍する選手は、そういったことをよくわかっている。だからコンディショニングに対する意識も高いんです。そしてこれはプロの世界に限らないはず。コンディショニングが人生のターニングポイントになることは十分にあると思います。

 

エビデンスか感覚か

 

—— 舟山さんは、研究者として、エビデンスと感覚の両方を大事にされていますよね。


舟山 そうですね。数値化できる客観的な機能性と、数値化できない感覚的な良さ、その二つが両立している商品が僕らの理想でもあります。睡眠って、不眠症が治ったかどうかをお医者さんが判断する時も、客観的データだけではなくて、本人が「寝れている」と感じているかどうかが、臨床現場での大事な評価項目です。つまり睡眠は主観と客観の両方が大事。だからTENTIALの商品開発でも、試験をしてきちんとしたデータをとるだけでなく、着心地などの感覚的な要素にもこだわっています。機能的なエビデンスがあっても、着た時に感覚が良くないと結局使われなくなりますしね。両軸でアプローチするということを、重要視しています。


阿久津 BAKUNEについて、選手からは必ず聞かれるんですよ。「ちゃんとエビデンスはあるんですか」って。そういう時に、自社できちんと研究されているというのは、僕としては推しやすいポイントになります。「感覚がいいよ」に加えて、自社でこういう試験で検証しているというエビデンスも伝えられる。しかも舟山さんは、「ここまでは言えるけど、ここから先は言い切れない部分もある」という限界も含めて話してくれる。とても真摯だし、僕も選手にちゃんと伝えやすいんです。流行ってるからいいよ、みたいな雑な勧め方は、僕は絶対にしたくない。だって選手は、僕の言葉を信じて買ったり使ったりするので。自分が責任を持てないものは紹介できないんです。

 

 

自分のポテンシャルに、意外と気づいていない

 

—— このキャンプは、これからも続けていきますか?


内藤 そうですね。そのように考えています。


阿久津 知識って、18歳でも20歳でも30歳でも、早く知った方がそれを使う年数が増えるじゃないですか。だから、できるだけ早く正しい知識を知ってもらって、使うか使わないかは選択してもらえればいい。その選択肢を、このキャンプで伝えていきたいですね。


舟山 今回、このキャンプに参加して、みなさんすごく伸びしろがたくさんあるなと感じました。このキャンプが自分の可能性に気づくきっかけになってくれたらいいなと。自分が思っている天井よりも、実はもっと上に天井がある。そこに気づいてもらうことは、大きな意味があると思います。


—— 自分のポテンシャルに気づいていない、という人は多いのかもしれませんね。


舟山 本当にその通りで、自分で思っているよりも、高いポテンシャルを秘めている方は多いと感じています。コンディショニングって味付けでしょ、と思っている方も多いと思いますが、僕はコンディショニングで物事を逆転させられるくらいの威力があると信じています。

 

 

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