松山英樹や蟬川泰果など、ゴルフ界を牽引するゴルファーを輩出し続ける、東北福祉大学ゴルフ部。彼らが試合最終日、勝負どころで必ず袖を通すのが「黄色のウェア」です。そのユニフォームが、今年新しくなりました。制作を担ったのは、2023年から同ゴルフ部をサポートするTENTIALです。選手と一緒につくった勝負服。その共創の歩みをご紹介します。


埼玉県北西部にある「こだまゴルフクラブ」。このコースは、学生ゴルフの大会が数多く開かれ、夏には、予行練習も兼ねて多くの大学が合宿に訪れます。8月の強い日差しが降り注ぐ芝の上には、東北福祉大学ゴルフ部の姿もありました。
選手たちは早朝からコースに出て、昼の休憩をはさみ、1日で1.5ラウンドを回るといいます。ゴルフ部のトップ選手ともなると、ベストスコアは60台前半。プロでも通用する高いレベルです。実際、TENTIALがサポートする蟬川泰果プロも、同大在学中にプロツアーで2勝をあげています。
彼らの拠点は、宮城・仙台。“ゴルフ界の東大”とも呼ばれる、東北福祉大学ゴルフ部は、1989年の創部以来、全日本大学ゴルフ選手権を40回以上制覇。松山英樹、池田勇太、そして蟬川泰果と、日本のゴルフを背負うプロを送り出してきました。集うのは、プロを本気で目指す若者たちです。

この部には、ひとつのルーティンがあります。勝負どころとなる試合最終日は、選手全員が黄色のウェアに袖を通すのです。副主将の黒田裕稀選手は、こう話します。
黒田 この色は僕らにとって特別な色。黄色のウェアを着ると、気合いが入ります。だから僕は普段絶対に、黄色のウェアを着ません。試合最終日に、みんなで着るときだけなんです。
今回、その黄色の勝負服を、TENTIALは選手たちと共につくりました。その話の前に、まずは東北福祉大学ゴルフ部の強さの秘密に迫ってみたいと思います。

プロを目指して集った彼らが、入学して最初にぶつかるのは、圧倒的なレベルの差です。現在4年生の田村軍馬主将と黒田選手は、入部当初をこう振り返ります。
田村 自分ではいいゴルフをしたと思ったのに、周りはアンダーを連発していて。距離も精度もメンタルも、先輩たちと比べると全てが劣っていました。
黒田 1年のとき、いまツアーで活躍している岡田晃平さんと一緒にラウンドさせてもらったんです。安定性も、ここぞという場面での勝負強さも、全然違いました。

選手たちは打ちのめされた後、それぞれのやり方で、自分自身と向き合いました。3年生の楢崎王牙選手と志村由羅選手はこう言います。
楢崎 僕はとにかく練習をすること、量をこなすことを考えました。でも、練習を重ねるほど身体が悲鳴を上げて……。さすがにケアをしないと、と気づいたんです。
志村 自分は、大事な試合の前ほど怪我が多くて。だから練習の量よりも、ケアを大事にするように意識を変えました。寝る前のストレッチや、プレー前後のケアを、もっと大事にするようにしたんです。

左から、楢崎選手、黒田選手、田村選手、志村選手
高い壁にぶつかったことで、彼らの意識が変わっていきます。どうしたらもっと上手くなれるのか?その試行錯誤の中で、選手たちは自然とコンディショニングの重要性に気づいていったと言います。その過程で、黒田選手がたどり着いた答えは“眠り”でした。
黒田 上手い先輩ほど、めちゃくちゃ寝ていることに気づいたんです。だから僕も、ちゃんと睡眠はとろうと。そうしたら、疲れの残り方が全然違ったんです。チームにはコンディショニングをサポートする専属のトレーナーもいて、技術的なことだけではなく、食事や睡眠についてもアドバイスをもらっています。例えば、就寝の1時間前はスマートフォンを触らない、部屋の暗さや室温を整えるといったことです。トレーナーのアドバイスに従い眠り方を変えてから、翌日の集中力が変わりました。最終日まで集中が切れなくて、自分でもびっくりするくらいでした。

同大ゴルフ部OBであり、30年にわたって選手を見てきた梶井コーチも、東北福祉大学ゴルフ部の強さの理由のひとつとして、コンディショニングを挙げます。
梶井 12月から2月までの3か月間は、部の活動ではクラブを握らせないんです。その代わりに、翌シーズンへ向けた基礎体力づくりのトレーニングをします。球を打つのは、あくまで個人練習の時間です。部として提供するのは、身体づくり。これが、強さの土台になっていると思います。
ゴルフ部には、コンディショニングのためのトレーナーもいます。そのトレーナーが、シーズン中もチームに帯同してくれるんです。選手の身体のケアを全部やってくれて、睡眠や食事のことも、試合に向けた調整の仕方も、選手たちに教えていきます。
だから選手は、コンディショニングの基礎知識が自然と身についていきます。コンディショニングトレーナーがつくようになったのは、平成の初期からです。コンディショニングは今でこそ当たり前に重要視されていますが、当時はまだ根性論の時代。でも我々は、連戦が続く選手の身体をケアして、怪我をさせないようにしようと思ったんです。秋のリーグ戦は1週間ずっと試合が続き、1日に2ラウンド回ることもある。何もしなければ疲労は溜まる一方ですから、選手にとってリカバリーやコンディショニングは、とても重要なんです。
身体を整えるということは、ゴルフ部がずっと大事にしてきたこと。だからTENTIALとのパートナーシップは、私たちにとってとても意味があることなんです。

梶井亮介/東北福祉大学ゴルフ部コーチ
継続的に高いレベルでパフォーマンスを発揮するために、コンディショニングは重要。自然とそのことに気づける育成環境が、同大ゴルフ部の強さの理由の一つだと言えそうです。
そんな彼らに、TENTIALは2023年からBAKUNEやBAKUNEアイマスクを提供し、彼らの睡眠環境を整えるサポートしてきました。その使い心地を、黒田選手はこう教えてくれました。
黒田 僕はもう、BAKUNE以外では寝られないんです。肌触りも着心地も良くて、快適に眠れる。寮でも風呂上がりは、みんなBAKUNEを着ています(笑)。シーズン中は長距離の移動も多いのでアイマスクも手放せません。

BAKUNEでの睡眠体験は、やがて「TENTIALのウェアで試合を戦いたい」という選手たちの想いにつながっていきました。その彼らの声に応えるべく、始まったのが今回のユニフォーム制作プロジェクト。既存商品のデザインを変えるのではなく、選手たちの要望を取り入れながら、素材もパターンも見直した新たなゴルフウェアの開発です。
TENTIALのゴルフ領域を担当し、選手と向き合ってきた森本はこう言います。
森本 彼らは、良い・悪いを見分ける力がすごく強い。身体の感覚がとても鋭いんです。例えば、縫い目のちょっとした出っ張りや、生地の突っ張り具合や肌との摩擦など、わずかな違和感にとても敏感で。選手たちには試作品を試してもらいながら、さまざまなフィードバックをもらい微調整をしていきました。日々コンディションに向き合うアスリートだからこそ、彼らはわずかな違和感が集中を奪うことを、身体で知っていました。その言葉にならない感覚を引き出し、形にするのが、開発を担う守屋の仕事でした。

森本 涼麻/株式会社TENTIAL R&D本部アスリートリレーション部
TENTIALのアスリートウェアの企画開発担当者である。守屋は、さまざまなユニフォームのサンプルを大学に持ち込み、選手に着用させスイングをしてもらったといいます。
守屋 “この辺が突っ張る”という一言を拾っては、パターンに落とし込んでいきました。面白かったのは、摩擦や突っ張り感がないと、逆にスイングの感覚がつかみづらいという選手もいたということ。スイングするたびに、毎回同じ抵抗があった方がいいと。それって、ゴルフというミリ単位で再現性が求められる競技ならではの感覚ですよね。かと言って、過度な抵抗はNGです。ウェアが動作を邪魔してはいけません。その両立が難しかったですね。

守屋 俊治/株式会社TENTIAL 商品本部企画開発部
選手たちからのフィードバックを受け、守屋は社内のパタンナーやデザイナーとウェアの改良に取り組みます。そうしてたどり着いた答えのひとつが、肩に縫い目をつくらないこと。そして、背中などのパーツを、あえて大きく一枚で取ることでした。
守屋 パーツを少なくすれば縫い目も減らせます。つまり、着ていてストレスが少ない。本当は、パーツを細かく分けたほうが歩留まりが良くて、コストも下がるんです。でも、そこは妥協したくなかった。また、腕や肩の動きを邪魔しないように、一般的なセットインスリーブではなく、背中側で袖を縫い付けて、肩部分はシームレスになっています。開発者として意識したことは、どれだけノンストレスで動きやすいものにできるかということです。僕もパタンナーも、ゴルフをするのでその経験もいかして、パターンにはかなりこだわりました。

守屋には、アスリートウェアをつくる時に、大切にしていることがあると言います。
守屋 ゴルフクラブと違って、ウェアを変えたとしても、フィジカルのパフォーマンスはそこまで変わらない。でも僕は、ウェアも“戦うためのギア”だと思っています。ウェアにストレスを感じれば、それは確実にプレーに影響があるはずで、ゴルフのようなちょっとした違和感がプレーを左右する競技であれば、ウェアの影響は小さくないと思うんです。だから目指したのは、メンタル面もサポートするコンディショニングウェアとも言えるかもしれません。違和感なくノンストレスでプレーができる。そこが今回大切にしたポイントです。

できあがったユニフォームに袖を通した田村選手は、その着心地をこう語ります。
田村 サンプルを試した時に、守屋さんや森本さんが、”気になることがあれば正直になんでも言ってほしい”と言ってくれて、素材も何種類も提案してくれました。ここまでこだわってるんだなって、正直驚きました。そうやってできた完成品を着てみたら、驚くほど腕が振りやすいんです。生地の張りもストレッチ具合も丁度よくて、着ていることを忘れるくらい身体にフィットします。

ありあまる体力を持つ学生の時期は、リカバリーやコンディショニングの重要さに気づきづらいもの。けれど、その意識の差が、将来のパフォーマンスを大きく左右することがあります。
東北福祉大学ゴルフ部の選手たちは、可能性の塊です。その才能を、TENTIALはコンディショニングによって支え、彼らのポテンシャルを引き出していきたいと考えています。
睡眠のサポートから、プレー中のサポートへとつながった、東北福祉大学ゴルフ部とTENTIALのパートナーシップは、これからも続いていきます。