スポーツ・ビジネス・アート・カルチャーなど各分野で挑戦を続けるプロフェッショナルが、自分の身体にどのように向き合い、どのようにポテンシャルを発揮しているのか。ご自身のライフスタイルで実践されている「コンディショニング※」についてお伺いします。
今回は、書道家の中澤希水さんが登場。若くして「10万人に1人の難病」を患い、闘病生活を経て辿り着いたという、中澤さん流の健康を維持する秘訣をお伺いします。
※TENTIALが定義するコンディショニングはライフパフォーマンス向上のために、体調に関わる全ての要因を良い状態に整えること
── 中澤さんはご自身のライフスタイルの中で、コンディショニングについてどのくらい意識していますか?
筋トレこそしないものの、スタンスとしては常に最高のパフォーマンスを出せるためのコンディション作りを、日頃から無理のない範囲で心がけています。いろいろ試行錯誤をしていく中で自分だけのルーティンを確立したのですが、それからずっと調子がいいです。
── 書道における「最高のパフォーマンス」とは?
とにかく「自然体」であること。感情の起伏や呼吸のムラを、意識しないレベルでフラットにしておく状態を作っておくことですね。でもそれは、「よし、やるぞ!」と思っていきなりできることではないから、日常生活の中でも常に自然体でいられる状態にしておく必要がある。そうすれば日常の延長として書道に向き合えるわけですよね。そのために睡眠や食事、飲み物など生活全般に意識を配るようにしています。
── コンディショニングを意識するようになったきっかけは?
中学校3年生の時に、「10万人に1人」と言われる難病を患ったんです。酷い時は四肢が麻痺して、ほぼ動けない状態まで悪化しました。当時、医師は両親に「おそらく後遺症が残るでしょう」と告げたそうです。車椅子生活になったり、脳に障害が出たりする可能性が高いから覚悟しておいてほしいと。そのくらい大きな病気だったんですよね。幸いまだ自分が若かったのもあって、回復も早く健康な状態に戻ることができたのですが、リハビリも「歩く練習」から始めなければならないくらい大変だったし、その時の経験が自分の中でとても大きく、身体に対する意識がおそらく普通の人よりも敏感になりました。
同時に、その頃から僕は書道家になることも決めていましたね。両親が書道家ということもあり、病気から復活して高校に入ると最も熱を入れていたのは書道だったし、大学進学もその道へ進むと決めていたんです。なので、「理想の書」を追い求める上で大切なこととして、身体のことや食事のことを常に考えていました。
── コンディショニングを維持するため、具体的にはどんなことをされているのでしょうか。
まず睡眠は、毎日必ず8時間を確保するようにしています。7時間では足りないし、9時間では逆に頭がぼーっとしてしまう。起きている残りの時間を全力で動けるようにするための睡眠時間として、これが自分にはベストです。そのため、基本的に午前中は外での仕事を入れないようにしています。例えば仕事で午前2時に就寝したら、起きるのは朝10時ですし、朝まで仕事をしてしまったとしても、そこから必ず8時間眠る。よほどのことがない限り、2、3時間寝て早起きして出かける、みたいなことがないようにしていますね。
── 運動や食事も気をつけていますか?
まず、運動は大嫌いなんですよ(笑)。だから基本的に何もしていないのですが、なるべく長い距離を歩くようには心がけていますね。時間があるときは極力目的地まで歩く。東京に住んでいた頃は、打ち合わせ先がもし3つ先の駅だったらそこに徒歩で行っても間に合う時間に家を出ていました。走るよりもしんどくないじゃないですか。でも、そのくらいかなあ。人からはよく、「ジムどのくらい行っていますか?」とか「何か格闘技でもやっているんですか?」なんて尋ねられますが、何一つしていないんです。
中澤さんがご愛用している筆の数々。大きい筆などを使う際は墨を含ませると非常に重たくなるという。
ただ、書道そのものが「運動」と言えるかもしれません。例えばイベントなどで、ものすごく大きな字を書く時には体幹がブレブレだと書いている所作も美しくないし、字そのものもヨレヨレになってしまう。ちゃんとした姿勢を保ちながらしっかりとした字を書く、そのための練習が体幹トレーニングにもなっているんです。
── なるほど。
長時間、机に向かって書を書くときも、ちゃんと姿勢を正して呼吸もナチュラルな状態にしないと難しいんです。今の僕が、姿勢を正した状態で何時間でも字を書き続けられるのは、いつの間にか体幹が鍛えられてきたからだと思いますね。今年46歳になるのですが、高校生の頃から体型も体重も何一つ変わってないんです。さすがにこの歳になると、周りの同年代はみんなお腹が出たりしていますが(笑)、「お前はあの頃から全然変わってないな」とよく言われますね。別にそのための努力をしているわけではないのですが、おそらく書道をやっていることが体型維持にもつながっているのかと思います。
取材2日前に訪れていた西表島での制作風景
── では、食事に関してはいかがでしょう。
今は酵素玄米と納豆と味噌汁と糠漬けだけを摂っています。これまで様々な試行錯誤を繰り返してきましたが、基本的に家で人と会わずに食事をするときは、これを1日1食。夜だけがっつり、お腹いっぱいになるまで食べています。本当にこれだけなので、キッチンには何もないんですよ(笑)。
その代わり外で人とご飯を食べるときは、好きなものを好きなだけ食べる。ちなみに外食は週に2、3回くらいですかね。このサイクルが今はちょうどいいですし、ストレスもないし体調もいい。しかも普段、こういう食生活をしているぶん外食がめちゃめちゃ楽しみになりました。基本的に僕は呑まなくても平気なんですけど、お酒の場は好きなので、会食の延長で2軒目、3軒目となった時には普通にみんなと呑んでいますね。
── コンディショニングを実践していく上で、こだわりのツールやグッズはありますか?
そういう道具も無頓着なんですよね。歩く時も普通に歩きやすいスニーカーですし、体の部位を鍛える器具も持っていない(笑)。寝具に関しては、タオルケットくらいの薄手の手紡ぎのシーツを敷いていています。とても暖かくて重宝していますね。寝るときはいろんなことをシャットアウトしたいので(笑)、耳栓も必須です。時にはアイマスクもしていますね。とにかく眠りに集中できるようにしています。
アイマスクを試す中澤さん。睡眠に集中するためのアイテムも日々愛用しているという。
── そんな中澤さんに、今回はTENTIALのパジャマ「BAKUNE Pajamas Gauze」を試していただきました。
リカバリーウェアというものがあることはもちろん知っていました。以前も体をリカバリーしてくれるTシャツを着たことがあったのですが、素材が自分の肌と相性良くなかったんですよね。いくら「これ着るとあったかいよ?」と言われても、自分の肌が喜んでないとやっぱりダメなんです。でも、「BAKUNE Pajamas Gauze」は生地が4層構造のガーゼ素材になっていて、表裏の両方にコットンが出るように特殊なガーゼ織になっているじゃないですか。
実際に着てみたら、とても気に入って今は毎日着ています。これまでは綿100パーセントのパジャマを着用していて、それも悪くなかったのですが、「BAKUNE Pajamas Gauze」は「服を着ている」というよりも、体が暖かいものにふわっと包まれているような感覚なんです。布が皮膚に当たっている感じがほとんどしないくらい、とにかく軽くて手触りも本当に柔らかいんです。今はまだ1着しか持っていないので、洗濯のタイミングを考えるともう2、3着は欲しいと思っているところですね。あとは、パーカー「MIGARU WORK WEAR」も気になっています。普段着として着られそうだし、シンプルで持った感じも気持ちよかったので。
── TENTIALの商品を、どんな人に勧めたいですか?
まずは両親にもプレゼントしたいなと思っています。まずは自分と近しい人に、この気持ちよさを体験してもらいたい。みんな良いコンディショニングで会えれば、きっといい連鎖を生んでいくじゃないですか。
中澤希水さん書「道」
── 最後に、読者へメッセージをお願いします。
とにかく今は情報がいくらでも入ってくるので、ついそれに流されがちになってしまうじゃないですか。でも、情報はあくまでも参考であって、基本的に食べ物は自分の内臓に聞き、着るものは皮膚に聞くのがベスト。内臓や皮膚が喜んでいるかどうかの観点で選んでいくと、自分に何が合っていて何が合っていないのかが明確になると思うんです。年齢によってもその軸が変わってくることもありますしね。常に自分の身体に耳を傾ける習慣をつけると、自ずと答えは出ると思いますよ。
書道家
KISUI NAKAZAWA